そのときまでぼくは、会社というのは定時に出社し、いわれたとおりにやっていると自動的に給料を払ってくれるボランティア団体みたいなものだと思っていた。喫茶店のウエイターとマクドナルドの掃除のアルバイトだけで、「ビジネス」の経験はまったくなかった。編集長にどう説明しようかと考えながら会社に戻る道すがら、「これじゃヤバイ」とはじめて思った。

大学時代に麻雀のやり過ぎで留年したんだけど、医師国家試験なんかちょっと勉強すれば余裕だと思っていた。

昔から根拠のない自信だけはある問題児だったからね。
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留年中は当然学校には行かないで、「笑っていいとも!」と同時ぐらいに起きて、シャワーを浴びて昼飯を食べに行って、夕方頃になるとその当時付き合っていた彼女がマンションに遊びに来るから、エッチして食事を取って、彼女の家まで送って行って、そして雀荘に行く。

次の日も同じ事の繰り返しの無限ループ。
(マンションに来る女性が違うぐらいで)

もしかしたらヤバイかもという思いと。

落ちていく気持ちよさと。

俺は大丈夫だという根拠のない選民意識と。

だけど下の学年のポリクリに入れられて、勉強を始めてからはマジでヤバイなって思ったな。

勉強会のために資料を作るんだけど、WBCの略語が意味が分からなかった。

分からない上に、調べる方法が分からない。

その当時はインターネットもないし。

一緒に留年した馬鹿仲間に「WBC」って何?って聞いていみると。

「俺も分からなくて、そこでつまずいている」と返って来るし。

下の学年が俺の事を知恵おくれ子を見るような視線の中で、「WBC」って何と聞く度胸もなく。

俺達の学年が大量留年した関係で、下の学年はビビって必死に勉強しているので留年ゼロ学年なんだよね。

因みにWBCってのは、「white blood cell」ね。

白血球が分かんないレベル。

その当時に知っているWBCって、World Boxing Council, WBCのボクシングのチャンピオンのことだと思うよね。

その2年後、無事に医師国家試験に合格。

その25年後、超富裕層

ヤバイと自覚することが大切で、自覚した後は死にものぐるいで頑張るからどうにかなるもんだよね。

おわり。