日本外科感染症学会理事長 草地信也(東邦大学医療センター大橋病院 外科)の記事が面白い。

日本の周術期管理
 “外科医を中心として行ってきた日本の高いレベルの周術期感染の管理・治療”と強調した理由は、日本の周術期感染対策・管理が一部の感染症科や感染制御部、また、一部の集中治療科の先生方に正しくご理解いただいていない現実があるためです。外科の経験がなくて外科医療の現状をご存じない感染症科医や一部の集中治療医、感染制御部のスタッフから“日本の外科医はエビデンスがない経験的な医療ばかりやっている”、“ドレーンを入れすぎる”、“経鼻胃管の留置が多い”、“抗菌薬の使用が適正でない”などのご指摘を受けています。 外科以外の診療科の先生方や様々な職種の方に日本と欧米の手術そのものの違いや、欧米に比べて手術関連死亡率が1/10〜1/5であり、その理由として日本の外科医は最後まであきらめずに治療してきたこと、また、国の保険制度がそれを許容したこと、すなわち欧米のようなエビデンスがある治療だけでは不十分であることを説明するのは非常に忍耐と労力を要することです。


外科の経験がないにもかかわらず治療に参加することを強いられる感染症科医や感染制御部の薬剤師やICNにとっては欧米のガイドラインやエビデンスを根拠に治療するしか道がないことはやむを得ないことです。外科医がこの点をご理解して頂くように説明するのは大変な労力を要しますし、大きなストレスでもあります。


CHDFやエンドトキシン吸着療法(以下PMX)を否定する集中治療医も多いです。 エビデンスがないというのがその理由と考えます。しかし、例えばPMXの海外の比較試験では外科的処置によって敗血症が治癒できない腹腔内感染の症例が対象となっています。つまりsource controlが不成功の状況でPMXの有効性を比較しています。Source controlができなければ最後には死亡しますので、差が出るわけはありません。しかし、短期的な予後はPMX群が優れ、施行後数日間は循環動態が安定することは確かめられています。この間にsource controlに成功すれば患者は救命できる可能性が出てきます。つまり、日本では何度でも最後までsource controlができるので、一人でも多くの周術期感染患者を救うためには一時的にでも全身状態を安定させるPMXも有用なのです。この点も日本と欧米の大きな違いであり、このような点が手術関連死亡率の差に影響を与えていると考えます。


日本では遠隔感染もまた外科医が治療しており、予後や入院期間、医療費に重大な影響を与えるため、サーベイランスや対策マニュアルやガイドラインが必要となります。よって、本学会はあくまでも外科医目線の、外科医のための感染対策を主導すべきで、そのためには遠隔感染のサーベイランスも整備すべきと考えます。


日本の周術期管理は現在でも世界最高レベルにあると考えます。そもそも、日本でしか行われていない難易度の高い手術もあり、その管理技術は世界唯一のものです。日本は周術期感染による死亡率や耐性菌の出現率でも世界的にも極めて良好な成績を収めています。海外の学会に対し、例えエビデンスはなくても、単に日本のサーベイランス結果、成績、管理体制をそのまま公表することで多くの海外からの参加者を集めることができると考えます。日本では、未だ明確なエビデンスに乏しい治療も承認されている場合もあり、このため他国の追随を許さない成績を収めていることが海外の研究者にご理解いただければ、自ずと注目を集めると考えます。よって、海外の外科感染症学会とのコラボを考えると、日本の特殊性を前面に出した演題を公表することが重要であると考えます。日本より成績が悪い諸外国のやり方に合わせる必要はなく、日本の外科医療を勉強していただく場を提供することが、彼らのニーズに合ったことだと思います。海外からの参加者には、日本では明確なエビデンスがない治療もできるので成績が良いことを学んでいただきたいと思います。


消化器外科医、心臓外科医、脳外科医は減少の一途をたどっています。医学生に聞きますと外科医志望の学生は多いと思いますが、前期研修期間に考えが変わってしまうようです。 そのもっとも大きな要因は外科医の労働条件ではないかと考えます。術者に対するインセンティブはどこの病院でも行っていますが、若い外科医にとって最も過酷と感じるのは術後管理ではないかと思います。将来的には、術後感染症は、担当外科医の指導の下で、Nurse practitioner、放射線科医による体腔内膿瘍ドレナージ(IVR)、消化器内科による胆道ドレナージ、内視鏡下ドレナージを依頼するような体制を作り上げる必要があると考えます。現状では、外科の経験がない感染症科医、感染制御部は欧米のガイドライン以上の治療は難しいかと思いますが、本学会が主導し、現在の日本の外科医が行ってきた高いレベルの周術期感染症の治療を習熟していただければ、外科医の労働条件も改善され、外科医が増えることを期待したい。


余りにも余りにも面白すぎてほぼ全部を引用してしまった。

外科系の医者ならリンク先の日本における外科医療の将来と周術期感染管理を全部読んでください。

非医者の方に分かりやすく説明すると消化器外科の草地信也先生は、EBMも日本の感染症内科医は糞だと言っていて。

その意見に対して、感染症内科医がふざけんじゃねえよ。お前のほうが糞だと言い返しているわけです。

笑えます。

医者でもそれぞれの立場で色々な意見があると思いますが、俺は草地信也先生の意見に非常に共感するんだよね。(同じ外科系なんで)

外科手術はアートアンドサイエンスとよく言われます。

2018年の日本において、感染症内科医とはアート(手技)が出来ない、かつサイエンスの理解も低い医者であると草地信也先生は仰っている。

お会いしたことはありませんが、多分このような感じの先生に思えます。
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茶化すような画像を載せてしまいましたが、草地信也先生こそが憂国の志士だと思います。

これからの更なるご活躍を期待しております。

おわり。