森くんはテニスのインターハイに出たというスポーツマンで、ジャーナリストに憧れて新聞社を受けたもののすべて落とされて、「出版社ならどこでもいい」と入ってきた。ところが実際の仕事は、うさんくさい会社の記事広告を書いてお金をもらってくることだったから、1週間もしないうち「こんなクズのような会社はすぐに辞めてやる」といいはじめた。

「やっぱりカネだろ、世の中は」最後に会ったとき、ぼくに向かって森くんは繰り返した。「儲けた奴が勝ちなんだよ」


俺は言霊を信じているんだけど。
声に出した言葉が、現実の事象に対して何らかの影響を与えると信じられ、良い言葉を発すると良いことが起こり、不吉な言葉を発すると凶事が起こるとされた。


言霊とは少しニュアンスが違うと思うけど、言葉に出してはいけない言葉が属性によって存在すると強く思っている。

一般的な常識では「世の中、カネだろ」は言ってはいけないワード。

でも俺は言って良いと強く思っている。

一方絶対に言ってはいけないワードは「世の中、カネじゃない」。

「世の中、カネじゃない」というワードを言って良いのは金持ちだけ。

貧乏人が「世の中、カネじゃない」と言った瞬間から運気が逃げていく。

同様なワードは世の中には一杯あるよ。

「人生は、学歴じゃない」

「女は顔じゃない」

「生まれは関係ない」

説明しなくても分かるとは思うけど、理解できない層もある一定数いそうなので。

「人生は、学歴だ」と俺も思ってないんだけど、「人生は、学歴じゃない」と言って良いのは、学歴がある人と他の方法論で成功した人だけだよね。

中卒、高卒、Fラン大卒にとっては「人生は、学歴じゃない」と証明することが、ある意味レゾンデートルでしょ。

「人生は、学歴じゃない」と言って他人から哀れみの目で見られれば、「人生は、学歴じゃない」と言って皆からそうだよねといわれる可能性を自分から閉ざしているのと変わらない。

「女は顔じゃない」は自分で発する言葉でなく、ブスなのに成功した、幸せになった女性が他人から掛けられる言葉が「女は顔じゃない(ですね)」でしょ。

「生まれは関係ない」も同様。

俺自身が生まれも育ちも悪い系だけど、「生まれは関係ない」と心で思って頑張るもので、自分の口から発する類のワードではない。

「生まれは関係ない」と誰もが思う状況で使わない限り、それってお前の言い訳なんじゃないの?となってしまう。

最後に。

「やっぱり世の中、カネだよ」

おわり。